久遠の絆
あらん限りの大声で叫んだ。


父親はのっそり起き上がると、睨みつける蘭に向かってにやりと笑った。


闇の中で、その醜悪な笑みが浮かび上がる。


「あっ……」


恐怖に足がすくんだ。


がたがたと体が震え始める。


(怖い)


拒否すれば、そのあとに待つのは制裁。


それを分かっていながら、どうして突き放してしまったのか。


醜悪な笑顔を貼り付けたまま、父親は立ち上がり、ゆっくりこちらに近づいてくる。


(もう、ダメ……)


腕を振り上げる父親を、蘭はまるで人ごとのように眺めていた。


その腕が、蘭の顔面を殴りつけるーー。



と思った時。



闇の向こうから、チリリリと涼やかな音が聞こえてきたのだ。


それと同時に、かすかに蘭を呼ぶ声がした。


(カイル?!)


空耳かと思うような声だったけど、たしかに彼に呼ばれたように思う。


状況を把握しようと動きを止めた父親の脇を、蘭はすり抜け、音に向かって走り出した。


闇の中だというのに、なぜか音のする方向が分かる。






チリリリン……――





蘭を誘うようになる鈴の音。

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