久遠の絆
騒ぎを聞きつけて、神官たちも部屋にやってきた。


蘭が座っていた椅子も、頑丈な机までも逆さになって倒れているのを見て、皆唖然としたように口を開けている。


「どうしたのだ?」

用意に時間が掛かり過ぎる。


文句を述べながら、他より威厳のある神官が入ってきた。


「セクン大司祭さま……」


続いて入って来たのは、カイルだった。


さすがの二人も部屋の惨状に言葉をなくし、戸口近くで立ち尽くしてしまった。


「ニアス、何があった?」


目を鋭く光らせながら、カイルは近習に詰問した。


「それが僕にもよく……」


すばやく着替えのために用意されていた衣で蘭の胸元を隠しながら、ニアスは困惑の表情を浮かべている。


「そうか」


歯切れの悪い近習を責めることはせず、カイルは

「神官がたは一度退席願います」


とセクン大司祭に向かって言った。


しかし大司祭は首を横に振り、

「もう時間がないのだ、元帥どの。かの方があの空間から外に出られる時間は決まっているのだよ。蘭さまにはお急ぎ願おう」


「そんな、蘭さまは今それどころじゃ!」


「ニアス」


声を荒げたニアスを黙らせると、カイルは普段けっしてしないような不敵な笑みを口元に浮かべた。


「この部屋に漂っている香り」


大司祭の眉がぴくりと動く。


「精神を安定させ、人を夢心地にさせる。だが強すぎれば幻覚を見せるというものですね。
たしか数年前に非合法となっていたようですが、どうしてその『香』の香りがこの部屋でするのでしょう」


「……」

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