ホテルの“4つのクリスマスストーリー”
苦笑いをして話を逸らし、必死に顔に笑みを戻してお祝いの言葉を述べると、そそくさとその場を立ち去った。
するとなぜか幼なじみのあいつが後を追いかけてきて、わたしの腕をつかんだ。
『誰、それ』
憂いを帯びてくすんだ彼の瞳は、わたしを捕らえて離してくれない。
表情を読み取れないせいでなんだかもやもやして、自分の鼓動が速まっていくのがわかる。
「あ、あぁ・・・あれは、会社の先輩。ちょっと買い出しに付き合わされて。っていうか、あんたに関係ないじゃん」
ふーん、と、全く信じていない様子で彼が遠くに視線を移したので、何故かわたしは焦って「それにあの人、彼女いるから」とむしろ墓穴を掘るような意味のない言い訳を付け加えた。
『俺今日実家帰るんだ。どうせ帰り道一緒だし、その時に根掘り葉掘り聞いてやるよ』
「あ、わたし友達とお台場のホテル泊まる約束してて・・・だから一緒に帰れないよ」
わたしは小さな嘘をついた。
友達となんか泊まらない。今の関係にどうにか白黒つけたくて、いけない恋の相手を誘っていたのだった。
『お前って昔から、男の趣味悪いよな』
“男”なんて言ってないじゃん・・・
式場から近くもないのにわざわざデートスポットのお台場に泊まるっていう時点で、怪しかったかな。