ホテルの“4つのクリスマスストーリー”


『もうすぐクリスマスですね~。早いなぁ』

「・・・ほんと。今年も恋人はナシかぁ」


我に返り、とっさに答えた。


『まだわからないですよ!あと1週間あるし』


バーテンダーとの会話をきっかけに、わたしはふたたび今に舞い戻ってくる。


毎年この時期になるとつかの間の夢物語を最初から最後までなぞってしまうのは、もう癖になっていた。乗り越えられていないからとか、まだ諦められないからとか、そういうことじゃない。

「あなたが負ったすべての傷には、未来のわたしがちゃんと手当てをしてるから」

わたしは過去の色んな自分に、そう言い聞かせてあげたいのかもしれない。


記憶から呼び寄せたほのかな寂しさが、アルコールと混じって少しだけ胸を締め付ける。


「今年はひとりで泊まりに来て、シャンパンでも空けようかな」


そう口に出すと、なんだか少し強くなった気がした。

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