ホテルの“4つのクリスマスストーリー”
なんか、みじめだ・・・。
不憫さの蔓延した空気に息苦しくなり立ち上がる。
「アイス買いに行くけど、何かいる?」
わたしが財布だけ小脇にかかえて玄関へ向かおうとすると、寒いから着て、とコートを持ってひょこひょこ付いてきた。
『おれも食べたい。一緒に行こ』
一見淡白で飄々と生きているくせに、まるで犬みたいに妙に人懐くて鼻が利く。わたしもわたしでそれを愛しがるものだから、損ねかけていた機嫌も簡単に直ってしまう。
「今日は誕生日特典で、何でも好きなの買ってあげるよ」
まったく、自分にあっぱれだ。わたしは彼に相当甘い。
『おれ、スーパーカップ』
「安上がりな男だねー」
いつのまにかやりきれない気持ちも忘れかけ、平和な言葉を交わしながら夜道を歩いていると、すれ違った若い女の子が「あ!」と叫んでこちらへ戻って来た。
『先輩!偶然-っ!!』
態度からしてその“若い”女の子は、どうやら彼の会社の後輩らしい。
『あ、ウワサの彼女さんですか?はじめましてー』
屈託のない眩しい笑顔が容赦なくこちらへ向けられる。
「あ・・・こんばんは」
『そういえば最近ここらへんに越して来たって、言ってたね』
『そうなんですー。今度美味しいお店とか、教えてくださいね!』
『うん、まあおれそんなに知らないけど』
若い女の子相手にデレデレしちゃって。
自分と比べた相手の若さと先刻の『ふ~ん』のせいで、普段なら全く気にならないことにもくだらない感情を抱いてしまう。