ホテルの“4つのクリスマスストーリー”

再びふたりになりコンビニに入っても彼は特に先ほどの後輩について説明をするでもなく、やっぱりこっちにしようかな~と、アイスを選び始める。

わたしも「今の、だれ?」なんて子供っぽいことは聞けなくて、またもやもやだけが残った。


『もうこんな時期かー』


クリスマスケーキ予約受付中!と、大々的にアピールしているチラシを手に取りながら、彼が言う。

今は11月下旬だけれど、ハロウィンが終わった瞬間にクリスマスムードになるのには、この街全体がもう慣れっこだろう。

もやもやに堪えきれなくなったわたしは、クリスマスというイベントにかこつけて、ある決心をした。


“逆プロポーズ”をしよう。


ダメだったらもうこの関係を終わりにしよう。だってとてもじゃないけれど、結婚をお断りされた相手とこの先も連れ添うなんてできない。イチかバチかの賭けだ。

家に帰る道すがら、わたしは彼に提案をした。


「今年のクリスマスは久々に出掛けない?思い出の場所めぐり」

『思い出の場所って?初めてデートしたところとか?』

「うん、恵比寿ガーデンシネマとか」

『よく覚えてるねー』

「おぼえてるよ・・・」


『いいね、思い出ツアー』


なんだかんだ彼だってわたしに甘くて、たまに言う我儘は大抵聞いてくれる。

ありがとう、と心の中で言いながらそっと彼の上着のポケットに手を入れた。


こんな風に過ごせる冬も、最後かもしれない。


自分で決めたことなのに、また涙がこみ上げて来た。


涙腺、弱くなったな・・・。


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