ホテルの“4つのクリスマスストーリー”
壁いっぱいの広い窓からは偶然にも、忙しなく右に左に過ぎてゆく新幹線や、空へと飛び立つ飛行機を眺めることができた。
あの新幹線が、あの飛行機が、いつも意地悪そうに笑って、わたしから彼を奪い去ってしまう。だけど憎みっぱなしではいられない。
だって、彼をわたしの元に連れてきてくれることだってあるのだ・・・そもそも、乗り物に当たるなんて、おかしいけれど。
そんなことを考えていたら遠距離恋愛で感じてきた複雑な気持ちが入り乱れて、すぐに止まると思っていた涙もなかなか乾いてくれなくて、わたしはお気に入りのおもちゃを取り上げられた子供みたいに、しばらくわんわんと泣いてしまった。
不思議なもので、涙は悲しみを吸い取ってくれるかのごとく、それをひとしきり放出してしまうと妙な爽快感に包まれた。
このめったにないラグジュアリーホテルへのステイを大好きな親友と一緒に楽しもうという気持ちがむくむくと湧いてきて、わたしたちはエグゼクティブフロアの専用ラウンジへと足を運ぶ。
ずらりと並んだオードブルやスナックからいくつか選んでカクテルと一緒にテーブルに運べば、まるで某海外ドラマのワンシーン。
「寂しい独り身と、イヴに仕事を優先された可哀想なわたしに乾杯」
親友は『やだ、開き直っちゃった。わたしはまだ諦めてないからね』などと苦笑しながらも、わたしの掲げるグラスにチン、と自分のグラスをあてた。