ホテルの“4つのクリスマスストーリー”
後日親友の家でされたタネ明かしによると、彼は仕事を早く終わらせて元々来る予定だったが、何かトラブルが起きて約束したのに行けなかったらわたしをもっと悲しませる、本当に行けることになったら連絡するから、途中で交代してくれ、と半ば失礼なお願いを彼女にしていたのだった。
わたしはいつも勝手に期待をしすぎて、その期待を裏切られると怒りだす。
そんなワガママなわたしの特性をよく理解した、彼らしい計らいだった。
わたしも彼も、自分たちの愛によく飼い慣らされている。
―― 好きなのにどうして離れていなければならないのか、わたしたちを取り巻く環境が今も憎くて仕方ない。
誰も何も責めることができず、怒りや悲しみのぶつけどころがお互い以外にないのも、遠距離恋愛のトラップのひとつだ。
会いたい時に会えないぶん、会えた時は普通のカップルの何倍も嬉しいとか、会えない時間が絆を深めるとか、そんなきれいごとを良く聞くけど、そんなの違う、会いたい時に会えるのがいちばんだし、会えない時間なんて不安を増長させるだけだ。
会って触れ合って幸せを感じると、それを失うまでのカウントダウンが始まって、その時感じた幸せでちびちびと食いつないでいられるほどわたしは強くないし、幸せの賞味期限だってそんなには長くない。
だけどわたしはただ、この人じゃなきゃダメなのだ ――
『どう? おれ、サンタさんみたいでしょ?』
いつの間にか自惚れたそんな態度も、今夜は可愛いと思ってあげる。
「うん。最高のクリスマスプレゼントかも」
『メリークリスマス』
そう言ってサンタさんは、わたしの額に柔らかな口づけを落とした。