ふたりのアリス
源三には「途中で留学したものの、幼稚舎から入っていた白鷺女子大学に編入したらどうか」と言われたが、鳩子は首を縦には振らなかった。
白鷺時代、鳩子には友達がいないといってよかった。
私の容姿から美人で、少しきつくて冷たそうにみえるらしい。
整った顔立ちに、ややつり上がり気味の目尻が、そういう印象を与えるのだ。おまけに、あまり感情を表に出すことがないので無表情に見られ、冷たさを感じさせてしまう。
クラスメイトと話したりはしたが、幼稚舎の時から学校が終わると、すぐレッスンの日々で彼女達と遊んだことなど一度もない。当時からヴァイオリンの才能を見込まれていた鳩子は「神宮寺さんは、レッスンで忙しいから」と、皆がどこか一線引いて接している事が分かった。
(ずっと、ずっと彼女たちが羨ましかった。普通にふざけあって冗談を言ったり、放課後にたわいもないおしゃべりをしたり・・・笑い合ったり)
「もう、お金持ちな訳じゃないし。白鷺の学費は高すぎるでしょう?」
「それは・・・」
「私ね、自立したいと思ってるの。自分でお金を稼いで生活したいの。これ以上、お父様の重荷になりたくないから」
「お嬢様・・・」
昔から言い出したら意思の固い鳩子の性格を知っている上に、もっともなことを言っているので源三は、それ以上何も言えなかった。
白鷺時代、鳩子には友達がいないといってよかった。
私の容姿から美人で、少しきつくて冷たそうにみえるらしい。
整った顔立ちに、ややつり上がり気味の目尻が、そういう印象を与えるのだ。おまけに、あまり感情を表に出すことがないので無表情に見られ、冷たさを感じさせてしまう。
クラスメイトと話したりはしたが、幼稚舎の時から学校が終わると、すぐレッスンの日々で彼女達と遊んだことなど一度もない。当時からヴァイオリンの才能を見込まれていた鳩子は「神宮寺さんは、レッスンで忙しいから」と、皆がどこか一線引いて接している事が分かった。
(ずっと、ずっと彼女たちが羨ましかった。普通にふざけあって冗談を言ったり、放課後にたわいもないおしゃべりをしたり・・・笑い合ったり)
「もう、お金持ちな訳じゃないし。白鷺の学費は高すぎるでしょう?」
「それは・・・」
「私ね、自立したいと思ってるの。自分でお金を稼いで生活したいの。これ以上、お父様の重荷になりたくないから」
「お嬢様・・・」
昔から言い出したら意思の固い鳩子の性格を知っている上に、もっともなことを言っているので源三は、それ以上何も言えなかった。