ふたりのアリス
「はぁ?!」
夜の7時、あずみはいつものようにバイト先のスタンドに行くと素っ頓狂な声をあげた。

「いやー、だからさ、このスタンド潰れるんだよ」
「い、いやいや!ちょっと待ってください!どういう事ですか?」
「ここさぁ、立地条件が悪くて他の店より業績悪いんだよね。しかも最近原油高じゃん?ダブルパンチ喰らっちゃった訳だよ」

(こんのハゲーッ!!何がダブルパンチだっっ!こっちなんかお前の一言で内藤大助のパンチ喰らったわ!!)

スタンドのチャラチャラした雇われ店長の薄い前頭部を引っこ抜いて除草剤をかけてやりたい衝動に駆られたが、無理矢理自分を押さえつけた。

「っつー訳でさ、今月いっぱいで辞めても貰いたいんだ」
この瞬間、あずみが思い描いていた肉を食べる夢が、遙か彼方の銀河系へでも飛んでいく様に消えた。


(今日は朝から散々だった・・・悪夢は見るし、スタンドは潰れるし・・・)
あずみはドス黒いオーラを背負いながら、とぼとぼと帰路についていた。

この辺は学園都市なのでスタンドが少ない。
やっと見つけた唯一のスタンドを辞めなければならなくなるなんて。
(しゃーない・・・どっか他のところを探さないとなぁ)

こんな嫌な日は早く寝るに限ると、あずみは早々に眠りについた。
(まあ、何とかなるでしょ)

何とかならない事態が翌朝待っているとも知らずに。








< 4 / 14 >

この作品をシェア

pagetop