君の世界から恋が消えた日
縋るようにハルの手をぎゅっと両手で掴むと
ハルの右手首に小さな字が書かれているのに気がついた

「a=3」

手にはその3文字だけが書かれていた
油性ペンで書かれているらしいその字は
すでに掠れて読みにくいが
この文字の意味を

俺ははっきり理解できた


この文字は俺にしか分からない
思い出の言葉だった


「ねぇ その計算間違ってるよ?」


遠い記憶の中
無邪気な少女が言ったあの言葉


俺は急いで駆け出した
ハルと出会ったあの図書館へ
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