１００回の好きの行方
「……悪いな、朝霧。呼び出して…。」

「いいえ。何かありました？」

「今朝、上から回って来たんだが、急だし……。」

と言いながら渡されたのは、豪華な封筒だった。

　宛名は、会社名になっているが嵜村篤人様、朝霧麻嘉様と書かれており、篤人は先に見たのか、封は切られていた。

「これって……結婚式の招待状ですか？あっ工場長の！娘さんの結婚式！えっ行っていいんですか？いつ！？」

　日付を確認すると２日後の土曜日になっていた。佐伯は、行くなら自分から連絡を入れるよっと麻嘉の返事を待った。
　
「土曜日ですか……。ちょっと予定変更するので待って下さい！」

　麻嘉はその場で、兄に連絡を入れる。賑やかに話す声に誰もが親しい人間だろうなと思っていると、電話口から微かに聞こえてくる声が男性のものだと、皆が気が付く。

「じゃ、予定は来週に延ばしてね！ありがとう。」

　麻嘉は話が終わると、佐伯にOKサインを出した。

ｰ大事な麻嘉の言うことなら聞いてやるよ。ｰ

　優しくて低い声の持ち主は、電話口で確かにそう呟いたのを近くにいた、尚志と篤人は聞き漏らさなかった。

　そしてそれに対して、急に不機嫌になる篤人の姿を、尚志は見逃さなかった。

　不機嫌になる度に、そんなことないと言い張る篤人だが、今回はそんなことは言わせるもんかと、尚志は思ったのだ。
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