100回の好きの行方
「1時からだから、9時に麻嘉の最寄り駅に集合でいいか?」

 不貞腐れたように、麻嘉に問いかける篤人に、笑顔を向ける。

「車出してくれるの?だったら軽く食べれるもの作ってくるね!ドライブデート!!」

 デザイン部を去ってから、篤人とメールも電話もせず、会社でも会わなくなって寂しく思っていた麻嘉は、嬉しさのあまり、そんなことを言ってしまう。

「っ馬鹿じゃねーの!!結婚式行くだけ!……デートじゃねーよ!」

 さっきまでは不貞腐れた表情だったが、今は売って変わって顔を赤らめてアタフタしている。

「そんな言わなくても……。」

 シュンとする麻嘉を、次は優しい眼差しで見つめる篤人に対して、誰もがこの歯がゆい感じに苦笑いになる。

「じゃ、土曜日9時に待ってるね。」

 気を取り直した麻嘉は、篤人にそう伝え、皆に手を振ってデザイン部を出て行こうとする。

「泊まり掛けだからって荷物たくさん持ってくるなよ。」

 篤人はそう伝え、麻嘉を見送った。

 その後、デザイン部は久々の穏やかな雰囲気に包まれたのを皆が感じとる。

 特に、篤人が纏うオーラがピリピリしておらず、麻嘉がデザイン部に戻って来ることはないのだろうかと、麻嘉が去った入口をみんな眺めていた。

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