100回の好きの行方
ーふたりの距離はどれくらいーの行方
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「なんで二人がいるんだよ……。」

 土曜日。麻嘉を最寄り駅まで迎えに行くと、そこにはニヤニヤしている千華と尚志が麻嘉の横に立ち、出迎えたのだ。

「見送りと荷物持ちだよ。」

 尚志はニヤニヤしながら"餞別"と何やら煙草サイズの箱をスーツの上着の内ポケットにさっと入れ込んだ。

ー千華がめちゃめちゃ張り切ってドレスアップしてたからさ。お前も理性が切れるかも知れないし、まっ、足りないかも知れないけど、普通のホテルにはないから、持ってないよりましだろ?ー

 ぼそぼそと千華と麻嘉には聞こえないように話す尚志は、篤人の上着の内ポケットをチラリと見ながら、聞き捨てられない台詞を放った。

 眉間にシワを寄せながら、ポケットを覗けば、コンビニで買いましたと言わんばかりに、シールが貼ってある代物が入っていた。

 睨み付けて返そうとしたとき、麻嘉と千華が二人に話掛けてきたので、ポケットに入れた手を引っ込めた。

「千華にネイルしてもらった!」

 麻嘉は自慢気にネイルして貰った爪を篤人に見せてきた。

 薄手のコートを着ているためどんなドレスか分からないが、前回のドレスじゃないことだけを篤人は祈り、二人に見送られながら出発したが、ことごとく、その期待は裏切られることになるのだ。
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