100回の好きの行方
「……あの…。」

 やっと息を整え、篤人の肩にまわしていた手をおろし、恐る恐る篤人の顔をみれば、未だに不機嫌な顔をしていた。

「なぁ。男たちがエロい目で見てるの、気がつかなかったわけ?」

「えっ!?」

 麻嘉はそんなことを言われると思っていなかったため、首をかしげる。

 隣に常に一緒にいる篤人と、ありもしない結婚式の妄想にふけていたため、会場の男性たちの話なんて耳に入らなかった。

『すげースタイルいい女がいる。』
『さっき落とし物拾ってくれたんだけど、屈んだ時に谷間が見えてさ~。思わず二度見してしまった。』
『エロいっすよね~。』
『首のリボンひっばったら、ポロリとかありえるんじゃね~か。』

 そんな会話を篤人はしっかり聞いていた。だから、二次会には参加させなかったのだ。

「篤人?」

 何も話さない篤人に不思議そうに呟く。

「気が気じゃなくて…酔えるかよっ。」

 ボソボソ話す声は、もちろん麻嘉には届かない。

「…私みたいな格好の人、……たくさん居たじゃない。エロい目でなんて見ないわよ。結婚式なんだし。」

 そのセリフを聞いて、篤人はさらに不機嫌になった。

「お前、なんで危機感皆無なわけ?」

「危機感って。大丈夫だって。」

< 114 / 188 >

この作品をシェア

pagetop