100回の好きの行方
「もう、いい加減認めたら?麻嘉を好きだって。」

「……好き……。でも、俺は、同僚のままでいたい。」

 気持ちを認めたら、ストンとパズルにピースがはまったようにモヤモヤが消えていくのが分かる。

「あーー!!もう、めんどくさいなぁ!!じゃ同僚のままでいろよ!誰かと付き合って、誰かと結婚するのを同僚として祝福してやればいい!!その度にイライラ、ムカムカすればいい!!」

 頭をガシガシかきながら、尚志が今度は不機嫌になり声を荒げた。

「それにな、あいつを引き抜きたいデザイン会社なんてたくさんいるんだ!会社辞めたら合うこともなくなるんだからな!」

「それは嫌だ。……誰かと一緒にいるのも、嫌だ。」

 思わず本音が漏れると、"だったらなんで……。"そう聞き返してくる。

「……もう何年も恋愛らしい恋愛してねーから、分からないんだよ。俺の全部受け入れてくれるか、わかんねーし。今のままが良くて、良い方にも悪い方にも転ぶの嫌だし、それに……。」

「まだあるのかよ?とんだヘタレだ。営業成績良いのに呆れる……。麻嘉だって関係性崩れるのが怖いのは一緒だよ。」

 その言葉を聞いて、納得した自分は、尚志が取り上げたビールを奪い返し、一口流し込むと"ありがとな"と、尚志にお礼を言っていた。
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