100回の好きの行方
 だが、今はどうだろう。

 結婚式から帰ってきてから、ただ淡々と生活しているだけのように感じる。

 しかも、諦めるってなんだろうか、と思ってしまう。

「………はっきり、同僚って言われたんだよ…。今までは、何十回気持ちを伝えても何も言わなかったのに。同僚って言われちゃったんだよ…。」

 泣きたいのを我慢してるように、下唇を噛みしめた麻嘉に何て言っていいか分からないでいると、"お見合いしようかな"とボソッと呟いたのが聞こえた。

「麻嘉……。」

「私なりに頑張ったから、悔いはないんだ。」

 その言葉がやけに耳に残った。兄の自分は恋人はいなくても縁談なんて無縁の世界にいることを、改めて申し訳なく思った。

 父は、早く花嫁姿、孫の顔が見たいがためだけに、相手がいなければ見合いだといってるわけじゃないことは、分かっている。

 だが、仕事も順調な麻嘉の今ある夢を奪ってしまうことになる。

 それに、麻嘉は自分の家のことは周りには話していないため、それを知った相手はどう思うだろうか。

 色々な意味で前途多難だと、嘉也は思った。
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