100回の好きの行方
 翌日、麻嘉と連絡が取れなかった篤人の機嫌の悪さは最高潮で、営業に出るときしか笑顔にならず、オフィスの全員が、遠巻きに見ていた。

 まさか、わざと麻嘉が電話を取らなかったと思いもしない篤人だが、いつもなら折り返される電話もなく、朝までうつらうつらしながら待っていたのだ。

「ねぇ、チラッと聞いたんだけど、麻嘉さん昨日、めっちゃイケメンとデートしてたみたいよ。」

「えっその話、本当だったの?」

「後輩がさ~朝聞いたみたい。そしたら、イケメンって誰って逆に聞かれたみたいだけど、その場所がラブマルシェだったから、ラブマルシェいましたよねってきいたら、居たよって言ったみたいよ!」

「ラブマルシェに女同士じゃいかないよね?じゃやっぱりデートだよね!」

 となりのインテリア部署の女性たちが、デザイン部署に聞かれているとは知らずに話を始め、未だに話続けている。

「でも、それ本当なら人事部の課長、落ち込むよね…。」

「あぁ中々相手に去れないって凹んでたけど。」

「てか、最近この手の話題多くない?」

「だって最近色気増してるし、嵜村さんに振られた噂もあるし。」

 好き勝手話している女性たちに、イライラを隠せない篤人は乱暴に椅子をデスクに入れると、"営業行ってきます"と、早々にオフィスを出ていった。

 その声は、インテリア部署の人間には聞こえていなかったようで、まだ、噂話に夢中になっている。
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