１００回の好きの行方

　その場に力なくしゃがみこむ菜月の目には、今までの強気な態度は一切なく脱け殻のようだった。

　誰もが声を掛けられず、それどころか憐れんでいるようで、冷やかな態度だ。

「おい！俺はまだあんたに聞きたいことがある！」

　声をする方を見ると、入り口からこれまた場違いな程の着物男子が、菜月目掛けて一直線に歩いてきた。

　手には花が生けてある状態の大きな花瓶を抱えており、菜月の目の前にドンと置き、この場が凍りつくような声を放った。

「なんだこの下品極まりない生け方は？朝倉霧島流に泥を塗ってくれたな！」

　突然現れた着物男子が何者か篤人が首を捻っていると、インテリア部の方から声が聞こえた。

"あの人だよ！一緒ラブマルシェにいたの！"
"えっ？めっちゃくちゃイケメンじゃん！"

　その言葉に、篤人は自分の拳を思わず握ってしまった。

　この男性は一体誰なんだろ、どんな関係だろう。

　その考えだけが頭を巡り、その様子を尚志に見られているとは思わないでいた。