100回の好きの行方
「あぁ……俺が預かってたんだが、菜月が自分のだと話すから…。悪い。」

 菜月は麻嘉から視線をずらし、けして合わそうとはしない。

「あなたは、人のものが欲しいのね!それは麻嘉の母の形見よ。家紋も入ってるでしょ。それを自分のだと言い張るなんて……。」

 ため息混じりで、うんざりした顔を向けられるが、菜月はそれでも何も言わない。

「何故こんなことしたか分からないし、知りたくもないですが、霧加屋ギャラリーと朝倉霧島流につけられたキズは大きすぎます。」

「えっ?」

 麻嘉は何を言っているのか分からず、貴乃を見るが、答えたのは嘉也だった。

「俺も今日聞いたんだが……。ジュエリー部門立ち上げに関わっていて、以前デザインを見ていた数人が、このデザインが別の会社で発表されたことで、辞めたんだよ。それに、この会社のロビーの花をみた、分家や生徒から、師範の免許を麻嘉から取り上げるよういってきた。麻嘉を追い出すよう言ってきたんだ。ボロカスに言うから何事かと思って、さっきこの花瓶みて、驚いたよ。あり得ないって……。」

 そう言って、先程から生け直せと言っている花瓶に視線をやった。

 生け花の心得はなくても、誰もが"なんか違うよね?"と思ってしまうため、嘉也の言いたいことが、手に取るように分かってしまう。
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