100回の好きの行方
 二人で対面するのは、海鮮丼を食べた時、以来だ。

 あのときも気まずかったが、それ以上に会話がないお通夜のような対面に、お互いが声を出せずにいた。

 メニューを持ってきた店員も、気まずさに耐え兼ねそそくさと去っていく始末だ。

「食わねーの?」

「……うん、お腹いっぱいで。篤人食べたら?力いっぱい仕事したら、お腹空いてるでしょ。」

「いや、胸いっぱいで食べれそうにない。」

 結局二人は夕食時に、ファミレスで頼んだのは飲み物だけだった。

「はさみ、ずっと探してたの。篤人が持っててくれたんだね。ありがとう。」

「いや、菜月に渡してしまってごめん……。部屋に来たときに、はさみみて自分のだって話すから。」

「そう……。部屋に来たんだ。」

 麻嘉の言葉が聞こえず、"んっ?"と言う篤人に麻嘉は"何でもないよ"と笑った。

「知らなかったよ、朝倉霧島流の関係者だったなんて。」

「……そうだね。」

「これからどうすんの?」

「将来的に、兄と家を手伝うつもりではいるよ。……初めから五年のつもりだった。だから、会社は今年いっぱいなんだ。」

「えっ!?」

 篤人は驚いて、自分で思ってるより大きな声を出してしまい、慌てて口をつぐんだ。
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