100回の好きの行方
「だから、同僚ですらなくなっちゃう。」

 篤人はその言葉をすぐには理解出来なかった。

 兄と家を手伝う……。会社は今年いっぱい……。同僚ですらなくなる……。頭の中で、そう繰り返えされる麻嘉の言葉。

 同僚である麻嘉を失いたくなかった。

 今の関係を壊したくなかった。

 そのために、"同僚"でいたいと願ったはずなのに。

 その気持ちが恋だと気が付き、やっと探していた女性に巡り会えたのに。

 どうすればいいのか、分からなかった篤人から出た言葉は的を得ない言葉だった。

「今日、何で着物なんだよ。」

「えっ!?」

「お兄さんの手伝い?」

「……お見合いだったの。」

「お見合い!?」

 篤人はまた、大きな声を出してしまい注目を浴びた。

「さっきの着物きた男は、お見合い相手だったのか。」

 その言葉に篤人に観られていた気まずさが、一気に溢れだし、麻嘉の視線はさまよった。

「なぁ、やっぱり華道とかしてると結婚は、家柄とかあるわけ?だって、今時、着物の男って関係者くらいだろ?」

「結婚って……。」

「お見合いって結婚するつもりでするんだろ?」

 イライラしながらそう話す篤人に、麻嘉はただ悲しくなって席をたった。
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