100回の好きの行方
 抱き締められ麻嘉は身動きが取れないが、今はそれで良かったと思った。

 嬉しすぎて、篤人の言葉に首をコクコクと頷くのが精一杯で、涙に濡れた顔を見られるのはすごく恥ずかしかった。

「麻嘉。顔見せてよ。」

 急に甘く囁く篤人に、くすぐったさを感じた。

 自分たちにこんな時間は訪れないかもしれないと、思っていたし、篤人のそんな対象になれるとも思っていなかった。

 ゆっくり顔をあげると、優しく笑いかける篤人がいた。

「……あきらめなくて、良かった……。」

 涙混じりに笑いながら篤人を見上げると、自分が好きになった篤人の絵顔があった。

「お前、泣きすぎだって……。」

 からかうように話す篤人に、恥ずかしくてちょっと膨れ面してしまうが、優しく涙を拭う篤人にビックリして、涙が止まる。

 あまりにも優しく触れるため、徐々にドキドキした気持ちが加速し、顔が赤くなるのが分かり、慌ててしまう。

「顔、赤いよ?」

「……ドキドキしてるの、気がついてるでしょ?」
 
「俺もドキドキしてるよ。」

 くすくす笑いながら語りかける篤人と、麻嘉の視線が交わい、篤人が麻嘉の唇に"チュッ"と軽いキスをし、また抱き締められた。

 すぐに麻嘉も篤人の腰に手を回し、深く抱き締めあった。



 
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