100回の好きの行方
 就業開始時間、30分前に、篤斗と尚志が並んで出勤する。二人が出勤してくると、周りから熱い視線が向けられ、黄色い声が投げ掛けられる。

 男女ともに人気を二分する二人は、話ながら自分のデスクに座る。

 麻嘉のデザイン部と篤斗たちの営業部は、同じフロアにあり、部門ごとにデザインナーと営業が一緒のしまにデスクを置く特殊な配置だ。

 和小物・アクセサリーのデザインを主に担当するのが、麻嘉ともう一人の女性の先輩で、営業を担当するのが、篤斗と尚志のため、意図的に会おうとせずとも、いやでも、会える距離だ。

 デスクは真向かいのため、盗み見みずとも、視野に入る。

「おはよう、篤斗、尚志。」

「よっ!」「ああ…。」

 尚志は明るい声だが、篤斗が麻嘉に返す言葉はそっけなく、視線を合わせないようにする態度に、先週、有休だった先輩が疑問を投げ掛ける。

「嵜村くん、なんか変じゃない?何かあった?」

 麻嘉の横の席から身を乗り出すのは、3年先輩で結婚して子どもがいる藤尾あかねだ。

「ふつうですよ。何もありませんよ?」

 あかねに頭を下げながら話す篤斗に、麻嘉は、少しムッとしまった。

 自分の告白は、何事もなかったように言われたように感じて。
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