100回の好きの行方
「………なんか、心配されないのも、複雑……。」

 そう不貞腐れている麻嘉に、父と兄は何も言わず笑っていた。

 すぐに頼んだお寿司もきて、四人で居間のテーブルで食事を開始する。緊張した様子の篤人に、麻嘉は気を取られるため、中々食事は進まない。

「いたっ。」

 お寿司を一口入れたとき麻嘉は、口の中の違和感から顔をしかめた。

 今まで忘れていたが、菜月に頬を叩かれた時に、口の中を切っていたのだ。頬も腫れてるようだ。

 不意に、篤人の手が伸びてきて頬がひんやりし、気持ち良い感覚に教われた。

「!!冷たい……気持ち。」

 篤人の方を見ると、フッて笑われた。

「冷えピタ。氷より楽だろ?」

 何故冷えピタが?、と言いたそうにしている麻嘉に"営業は暑いんだよ。"と答えてくれる。その様子を生暖かい目で眺められ、二人とも無言でお寿司を食べるのであった。

 お寿司も食べ終わり、おかわりのお茶を麻嘉が運んでくると、これからの仕事の話になり、家族の会話だと判断した篤人は席を立とうとするが、それを制される。

「君にも、麻嘉の仕事のことを聞きたいんじゃよ。」

 そう父に言われた篤人は、麻嘉の仕事に対する姿勢や、自分が救われた麻嘉の言葉を包み隠さず話した。
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