100回の好きの行方
 父の目をみて話す麻嘉に、"そうか。"と呟いた。それを聞いた兄が麻嘉に提案してきた。

「俺が家業を継ぐ。麻嘉には、支部の一部を任せたい。フリーランスになればそれは可能だろ?」

「兄さん…支部って。それは可能だけど……。」

 篤人は、唯一麻嘉の家業のことを知っている千華から、本部とは別に、兄の嘉也が納める支部が点在していることを聞かされていた。

 その時は、漠然とすごいなぁと思っていたが、麻嘉が納めるとなると、麻嘉の凄さが見に染みた。

 話を聞いていくうちに、支部は全国にあるが、兄の嘉也が納めていたのは5ヶ所。それを引き継いで欲しいとのことだった。

 フリーランスになれば、仕事は正社員並みだが、勤務体制はバイトと同じシフト制になり、毎日は出勤しないで良いため、会社、霧加屋ギャラリー、支部とを行ったり来たりすることになるのだ。また、自宅でデザインすることも可能と言う話だった。

 決めかねてる麻嘉の顔を、眺めていたら"どう思う?"と聞かれ、篤人は、自分に信頼を寄せてくれてるのが嬉しかった。

「挑戦したいなら、やってみたら?麻嘉のこと待ってるやつたくさんいるんだからさ。」

 その篤人の言葉が、麻嘉の背中を押した。

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