100回の好きの行方
「お兄さん、やっと家業継ぐんだし、そりゃ大変だ。」

 兄の襲名が決まり、お披露目式やら招待客やら、マスコミやら、準備することがたくさんあるため、仕事も有給とることがしばしばで、千華の顔を見るのも久しぶりなのだ。

「今日は?約束してるの?」

「うん、尚志と飲んだら駅前のカフェで待ってるって。」

「呼べばいいのに?」

「う~ん、私もそう言ったんだけど、久しぶりの女子会だからって。」

 そう話す麻嘉の顔は、すごくきれいに見えた。

 千華は度々思ってしまうのだ。

 麻嘉を見ると、恋は人をきれいに可愛くすると言うのは、本当なのだと。

 恋している課程でも、麻嘉は確かに乙女のように可愛いかったが、今はさらに綺麗で、こんな恋ならしてみたいと思わせてくれるほどだ。

 あんなに"女子力低い" "色気がない"と言っていた篤人は、綺麗になっていく麻嘉を間近で見て、ポーカーフェイスが崩れているときもあり、気が気じゃない様子だ。

 でも、千華は篤人がこれから先の二人のことを考えているのを知っているから、展開を予想し、心の中でニヤついているのだった。

 二人で二時間程の女子会を終え、篤人の待つカフェまで、二人で向かった。

 外から中を確認すると、ちょうど会計を済ませた篤人と尚志が出てくるとこだった。

 篤人は出てくるなり、千華を見て少し固まった。すぐに、普通に戻ったため、千華しか気がつかなかったがそれが面白くて堪らない様子の千華は、笑いを堪えていた。
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