100回の好きの行方
 篤斗と尚志は、一緒に営業先に出向いた。

 今回、コスメメーカーとコラボ企画で、持ち歩けるお洒落なメイクBOXのデザインを依頼された。

 麻嘉のデザインをえらく気にいっていたため、麻嘉がデザインを担当し、営業を二人が引き受けたのだ。

 本来なら、二人が同時に担当することはない。

 篤斗は和小物担当、尚志はアクセサリー担当で、通常なら尚志の担当になる。

 しかし、今回の依頼はお洒落なメイクBOXに、初回限定版に夏向けの浴衣や水着にあうアクセサリーを付けることと、デザイナーは"フラワーシリーズ"を手掛けている人が良いと、会社からの指名があったからだ。

 "フラワーシリーズ"とは自社ブランドの1つで、麻嘉と篤斗がタックを組み、爆発的なヒットになったシリーズ。

 未だに毎月出るそのシリーズをコレクションする人が多く、窓口は篤斗になっている。
 
 そのため、二人で担当したのだ。

 営業先の秘書はうっとりしたように二人に熱い視線を向けながら、デザインとは関係ない質問ばかりしてくる。

 二人がうんざりしていたところに、電話が終わった社長が入ってきた。
 
「あっ社長!?」

 秘書は社長が来たら姿勢を正し、借りてきた猫のようにおとなしくなりり、そそくさと部屋から出ていった。

「君たちイケメンだもんな。まぁ自分も人のこと言えませんけどね。」

 社長の言葉に首を傾げる二人。

「私、デザインもフラワーシリーズと言うか、朝霧さんの作品が好きなんですが……。朝霧さんにも興味がありましてね…。でも、メイクBOXを担当を指名したのに、下心はありませんよ。」
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