100回の好きの行方
ー甘くて苦いファーストキスーの行方
 連れてこられたのは、トイレに続く人があまり通りそうにない場所だった。

「……びっくりした…ありがとう。」

 ここまで来る間、一声も発さず、話せない雰囲気だったため、おずおずと話しかける。

 すると、ちょうど曲がり角の、向こう側からの招待客が全く見えない位置で急に振り替えられ、壁に押さえつけられ、麻嘉の足と足の間に篤斗の右足が割り込んできた。

 こんな時なのに、いわいる、股どんってやつだと、思うとドキドキしてしまう。

「あの……。」

 顔が見れずにいると、耳もとに顔を近付けてくる。

「なぁ、あんな風にみんなにチヤホヤされて、嬉しいわけ?」

 一瞬、何を言われているか、分からなかず、"えっ?"と呟くと、不機嫌な声が聞こえてくる。

「飲みに誘われたり、部屋に誘われたり、社長にあんなこと言われたり……。嬉しいわけ?」

 確かに、会場に入ると何人かの男性に、明らかに誘われたが、低調にお断りしていた麻嘉には、そのセリフは、寝耳に水だった。

 嬉しいはずもない。

 好きな男性から誘われたわけでもないのに。

 そんな風に篤斗に思われていたのかと思うと、ショックで仕方ない。

「……そんなはずないじゃん。」

 やっとのことで、麻嘉は口を開いた。
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