100回の好きの行方
「篤斗、待って!!」

 エレベーターのボタンを押そうとしている手を引っ込めながら振り返る。

「麻嘉?」

「彼女にあんなこと言って、大丈夫なの?」

「……大丈夫だろ?」

「なら、いいけど。」

「麻嘉のデザインは誰も真似できないし、麻嘉は仕事にプライベートを持ち込まない。……おれは、麻嘉のこと、たぶん一番知ってるよ。」

 そんな風に笑いながら言われ、麻嘉の胸はドクンと羽上がった。

 ダメだ、だってあの子が彼女なんだからと、頭では分かってるのに、なんでそんなこと彼は言うのだろうて思ってしまう。

 咄嗟に篤斗のスーツの裾を掴んだ。

 篤斗が振り返ろうとするが、次のセリフでそれは出来なくなった。

「前向いてて。」

「……麻嘉。」

「そんなこと言うと、諦められない。彼女いるの知ってる。でも、いつもちゃんとフッてくれない。好きなの……。どうしょうもないくらい。」

 篤斗は、何か言おうと、躊躇して、言葉を飲み込んだように見える。

 そのうち、エレベーターが来て、あやふやな状態で二人は別れ、篤斗は営業に向かい、麻嘉は、フロアに戻った。

 フロアに戻ると、インテリア部の話声が聞こえてくる。
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