１００回の好きの行方
　定時過ぎに、篤斗と尚志は久しぶりに一緒に会社を出た。

　話をしながら出ていくわけでもないのに、最近二人でいなかったため、会社の人間はようやく二人が仲直りしたのかと、何故か優しい眼差しで見られた。

　噂とは面白いもので、尚志は麻嘉を好きで篤斗に対して嫉妬してるんじゃないか、麻嘉以外と付き合った篤斗が許せないのではないかと噂されていたため、好奇な目で見られていたのだ。

　篤斗の家につくまで二人は、コンビニでそれぞれの買い物をし、お互いにあまり話はしなかった。

　家につくと、尚志は部屋の中を見渡した。

　彼女ができたわりには、恋人が出入りする部屋には見えない。

　部屋が特別綺麗になったわけじゃないし、壁に貼ってある四人の旅行の写真もそのまま、ビールを冷やすために空けた冷蔵庫の中身も空っぽ。

　菜月が出入りした様子は見られない。

「なぁ、正直に話して欲しいんだけど。本当に、深山と付き合ってんの？」

「………。」

「付き合ってないんじゃないの？この部屋、彼女いるような感じしないじゃん？」

「……。ちゃんと話す。」

　尚志に真正面からじっと見られた篤斗は、重い口を開きながら話し出した。

　菜月と付き合っている経緯を。
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