100回の好きの行方
 あの日、菜月に声をかけられた篤斗は、不覚にも"いなり寿司を作れるか"と、聞いてしまった。

 菜月は、それに対して"得意だよ!明日、作ってくるから一緒に食べない?"と誘ってきたのだ。

 菜月のことを、あの時の子だと勝手に思いこんでいる篤斗は、和服をきてしとやかにしている菜月のことを、疑うこともせず、暫くの間、会話をした。

 その中で、菜月がストーカーに悩まされていることを知り、"困ったら何でも相談してね。"と優しさを見せてしまった。

「クリスマスまでの半年間、彼氏のふりをしてくれませんか?」

「えっ?」

「ふりで、いいんです。本当に、困ってて……。」

 名前だけの彼氏でいい、キスもエッチもなし、行き帰り一緒にいてお昼を食べるだけ……そんなプラトニックな関係でいいと、今にも泣きそうな顔で言われ、一瞬躊躇したが篤斗は頷いてしまったのだ。

 
「それで?」

 話を聞き終わった尚志は、呆れ顔で篤斗をみた。

「プラトニックな関係じゃなくなったわけだ。」

「はぁ!?何でそうなる?家にも入れないし、キスもエッチもしてねーよ!」

 その篤斗の発言に、尚志は目を見開いた。

「えっ!?」

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