100回の好きの行方
「うわっまた、あんな派手な格好。」

 あかねがボソッと麻嘉に呟いた。

「あははっ、私は出来ませんね……。」

 その会話が聞こえていたようで菜月は二人に向かって笑いかけた。

「私は私に似合う格好をしてるだけです。朝霧さんは、自分に自信がないんだよね?だからいつもそんな格好なんでしょ?あっサプリ紹介しましょうか?胸が大きくなるやつ?足が細くなるやつ?それともフェロモン……」

 そう話し出した菜月の言葉を、コーヒー片手にデスクに戻ってきた尚志が遮った。

「へぇー深山は、サプリをそんなに飲まないと体型維持が出来ないんだ。大変だな、なっ篤斗?」

 尚志のすぐ後ろにいた篤斗に話をふった。

「……仕事中にサプリの話はやめろよ…。」

 微妙な顔をして、自分の席につく篤斗に、菜月はすぐに駆け寄っていく。

「篤斗、おはよう。今度の休み海連れていって~。可愛い水着買ったんだ。」

 篤斗の腕に自分の手を絡ませ、胸を押し付ける姿を麻嘉は見ながら、ズキッと胸が痛いのが分かる。

 オフィスでのこんな会話や光景は今に始まったことじゃないが、何回見ても胸を締め付けてしまう。
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