100回の好きの行方
「仕事しろよ。」

 絡ませられた手を振りほどきながら答える篤斗に、"ツンデレなんだから!"とご機嫌に笑う菜月は、麻嘉に向かって見せつけるようににやりとした。

 麻嘉が二人をじっと見ていると、佐伯から篤斗とともに呼ばれた。

「来週なんだが、二人で打ち合わせに行って欲しい。」

 二人は前に出された資料に目を通した。

「あっあの工場ですね……。」

 麻嘉がそう呟いた。

「朝霧に頼みがあるみたいで、嵜村だけじゃなくて、朝霧もって向こうから言われてさ、仕事調整して、お願いするわ!」

 篤斗は、分かりましたとすぐに席に戻るが、菜月にあれこれ聞かれうんざりし、そそくさと尚志と享と営業先に出掛けていった。

「ね、朝霧さん。間違っても篤斗に手なんか出さないでよ!」

 急にそんなこと言われギョっとしてしまうが、今回の二人での打ち合わせは、職場からはかなり遠い場所にある工場で必然的にいつも泊まりで行くような場所で、そう言われても仕方ないのだと麻嘉は思い、菜月を見た。

「そんな心配しなくても、深山さんは私が誘惑したらそれに彼が答えると思うの?そんな恋人を裏切るような人じゃないでしよ。深山さんが信じなくてどうするのよ。」

 麻嘉が笑いながら話すのに、菜月はイラッとしてしまうが、それを気づかれないよう"そうよね。"と大人な対応をした。


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