100回の好きの行方
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 そんな会話をしてると思わない篤斗たちは、ロビーを横切り会社を出ようとしていた。

 ふと、享が思い出したように話してくる。

「この玄関の花、深山さんがしてるんですよね。俺は、業者に頼んでいた昔のほうが、好きですけど…。」

 篤斗と尚志も足を止めてロビーの花を見て、先日のことを思い出していた。

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 篤斗が尚志に本当の話をした翌朝、菜月に恋人のふりをもうしないとはっきり断ろうとした。

 しかし、思わぬことが起きたのだ。

 玄関ロビーで花を活けている菜月が社長と話していたのだ。

 社長と話しているのも驚いたが、それよりもロビーの花を活けているのに驚いて、やはりあのときの女性は菜月じゃないかと思ってしまい、もう少し様子をみようと考えたのがいけなかった。

「君、嵜村君だね。深山さんのこと、よろしく頼むよ。じゃ深山さん来週からロビーの花、任せたよ。」

 颯爽と去っていく社長を見送りながら、先程の無言の圧力の様な目力を思い出した。

 よろしく頼むよと言うときの、あの鋭い目付き……、これは厄介なことになりそうな予感がした。

「社長、父の友人で……私たちのこと喜んでるみたいで。あっ、今度から、また、私が花を活けることに。どう?」

 そう話す菜月の目を見た瞬間、篤斗はやられたと思ってしまう。

 尚志が言う通り、恋人の"ふり"を望んでたんじゃないことが。

 それと、同時に花を活けている菜月があの時の女性だと分かったのに、失望しかないことに。
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