１００回の好きの行方
「ダメだ……。シャワー浴びてスッキリしよう。」

　そう心に決めてシャワーに入ったが、心は晴れることはなかった。

　忘れようとすればするほど脳裏を横切り、衝動的にしてしまったキスを思いだし、気持ちが高ぶるが、菜月のことを考えると気持ちが冷めてくるが分かり、ひたすら菜月との恋人のふりをやめる方法を模索し、麻嘉のことを脳裏から追い出した。

＊＊＊＊＊＊＊

「金曜日はごめんね！！」

　週明け、用事がありいつもより出勤が遅くなりフロアにあるカフェスペースを横切った時、そんな麻嘉の声がした。

　こっそり様子を見ると、麻嘉と尚志がそこにいて、何やらヒソヒソと話をしている。

　二人の様子はいつもと変わらないように見えるが篤斗は一瞬声をかけるのを躊躇ってしまった。

　にこやかに笑い合い、あの写真の出来事がなかったように振る舞う雰囲気に、なんとも言えない感情が沸き上がった。

　だから、二人に声をかけられた時、"おはよ。"と目も見ずぶっきらぼうに言ってしまい、買いに来たハズのコーヒーも買わずにカフェスペースを後にした。

　二人は、そんな篤斗を首を捻り見送ったが、その一部始終を見ていた菜月は、怖い顔をして親指の爪を噛み砕いて"絶対渡さないんだから"と呟いていた。
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