100回の好きの行方
「いいんだろうか?会社通さなくても……。」

「私が結婚のお祝いで個人的にすることなので、大丈夫です!だって工場長のお嬢さんのですもん!そんなこと気にしないで下さい。私からデザインをプレゼントさせてください!」

「えっ!?デザインをプレゼントして下さるんですか?」

 工場長の後ろから男性の驚いた声がする。工場長と男性が恐縮するのも分かる。

 自社ブランドのデザインを手掛け、フラワーシリーズがヒットしたことで麻嘉に対してのデザイン料は莫大なものだからだ。

 それを個人的にお願いするとなると、いくらになるのだろうかと考えていたに違いない二人は、申し訳なさそうだが安堵したような表情に変わっていく。

「娘の夫になるエンジニアの高元君だ。」

 そう言って工場長が麻嘉たちに紹介してくれた男性は、工場長を押し退け、麻嘉の手を握りお礼を言う姿を見て、篤斗はイラッとして眉がピクピクしていた。

「麻嘉を呼んだ理由はこれなんですね?」

 麻嘉の握られた手をやんわりと退かしながら、工場長に視線を向ける。

「直線、お願いしたくてね。もしかしたら、断られるかもしれないと思って。」

「篤斗だけ来てても、篤斗は断らずに私に伝えますよ。頑張って指輪デザインしますね!」

 麻嘉は満面の笑みを工場長と男性に向けて工場を後にした。
 
 
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