100回の好きの行方
 麻嘉が終電に乗ったのを確認すると、千華は、明るい駅前を通り、駅から五分もかからないマンションに帰る。

 平日は食事はせず、週末の金曜日だけ、二人はこうゆう風に過ごしていた。

 麻嘉は、電車でかなりかかる場所の実家に帰るため、次の日が仕事だと、ゆっくり出来ないからだ。

 終電の電車には酔っ払いも多いが、女性専用車両に座れたことに、ホッとして窓をみると、疲れた顔の自分が映っていた。

ー28歳までに、結婚相手見つけてこい!見つけられない時は、見合いだ。ー

 就職する条件が、この言葉だった。

 麻嘉の実家は代々続く華道の家元で、母親はおらず父親と兄がいる。

 兄は、結婚はしていないものの、あちこちに出張スクールを立ち上げ、忙しくしている華道家。

 父は、兄と麻嘉を競わせ時期家元を、選びたいと話しており、麻嘉が就職したいと話した時に、かなり反対し、渋々猶予期間をくれたのだ。

 麻嘉も、約束を忘れていたわけではないが、このまま何事もないことを祈り仕事をしていた。

『麻嘉、約束覚えてるだろうな?』

昨夜の父の言葉に、現実を思い出す。

 千華には、28歳までは好きなこと出来ると伝えてあるが、お見合いのことは知らない。
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