100回の好きの行方
 麻嘉は入社したときから、篤斗を見ていたから、一人一人大切にし、それこそお金にならないような、人がやりたがらないような小さな仕事だって嫌がらずにしていたことを知っている。

 休みの日に、営業先に足を運び手伝いをしていたのだって知っている。

 営業がやるような仕事じゃなくても、文句を言わずにしていたことも知っている。

 今じゃ営業成績1、2を争っているがそこまでに、長い道のりがあったことを知っているため、麻嘉は篤斗の営業を信頼していたのだ。

 二人はそれ以上話さなかった。

 麻嘉は、沈黙の中でーチャンスだよ!ーという千華の言葉が頭の中でループしていた。

 ちらっと篤斗を見ると、珍しく眼鏡を外したままの篤斗がケータイを見ながらため息を付き、ケータイの電源をオフしたのが分かる。

 ふと、篤斗と麻嘉の視線が交差した。

 じっと見つめられた麻嘉は、目を逸らすことも声を出すことも出来ずにいた。

「麻嘉。」

 やけに色っぽい声で名前を呼ばれた。

「……こっち、来いよ。」

 甘く囁かれ、その言葉が魔法の呪文のように聞こえ、麻嘉は吸い寄せられるように篤斗がいるベットに足を運んだ。
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