100回の好きの行方
 その時、篤斗の顔が過った。

 誰にも言わず、ただの同期として接し、気持ちをひたすら隠してきたが、本当にこれでいいのか…そう考えた時、自分は何もせずにお見合いして、悔いはないのか思ってしまう。

 100回、好きと言えば伝わる?

 100回、好きと言えば付き合える?

 麻嘉は、自分でリミットを決めた、100回と言う。

 101回目はないのだと。

 電車に揺られながら、麻嘉は目を閉じた。


*******

「えっ?それって、あまりにも具体的じゃない?」

「そーか?」

ー手料理が作れて、しかも今の子が作らないような、稲荷寿司とか。会社の玄関の花を生けるような、和服美人。ー

 尚志に聞かれて、篤斗が答えた好きなタイプが、これだった。

 しかし、あまりにも具体的だが、今時そんな子がいるだろうかと疑問視してしまう。

 でも、そう話す篤斗があまりに、優しそうな顔をするので、尚志はすぐに分かってしまう。

「好きな人いるんだ。」

「………!!ばっ、ばか!ちげーよ!」

 尚志の呟きに、真っ赤になりながらうろたえる姿を見て、すんなりと納得してしまった。

 この5年、そりゃー浮いた話もないわけだと。

 篤斗を応援したい気持ちもあるが、麻嘉も大事な同期なのだから、本音は二人とも幸せになって欲しいと思っている。

 二人が幸せになる方法を、つい、考えてしまった。
< 8 / 188 >

この作品をシェア

pagetop