100回の好きの行方
 俺が1歩踏み出そうとすると、麻嘉が肋骨辺りをそっと触れてきた。突然のことで、不覚にもピクリと反応してしまう。

「篤斗は、鍛えてるの?……引き締まってるね。」

「毎日、スイミング、50メーター8本。」

「毎日!?営業で疲れてるのに…。びっくり。」

 二人はお互いに肌に触れながら、そんな話をした。

「……だから、途中へばるなよ?(俺の持久力なめるなよ?)」

 俺は、長らく彼女はいないし、いないからと言ってそこら辺の女とワンナイトラブを楽しんだりしない。

 そういう欲求が起きないよう、自分を疲れさせ、自分をコントロールするため毎日ジムに通っていた。

 遥か昔の彼女には、ついていけないと言われた性欲。

 今は分からないが、多分今も変わらないはずだ。

 ニヤッ唇の端をあげ笑い麻嘉の全身にキスをし、色んなところに快感を与え続ける。

 逃げようと身をよじれば、そうはさせないと連れ戻し、今、見つけられた甘い弱点を、執拗に責めた。

 自分でも、不思議だが、もっとキスしたい、もっと触れて欲しい、もっと触れてみたい、もっと近くに、一つになりたい、その気持ちが高ぶる。

「……好き。……もう、お願いだから……。」

「お願いだから?」

「……欲しいよ…。」

 敢えて麻嘉にそう言わせるあたり、自分が抱いた理由に言い訳が欲しく、ずる賢いと心の中で失笑してしまう。

 ベットの上にあるものを手に取り、装着した。
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