１００回の好きの行方
　出張があったり、別れたのにまとわりついてくる菜月がいやで外食したりと極力オフィスを避けていたら、麻嘉にもマトモに会わなくなった。

　尚志とはたびたび会っていたが、千華に会うのも昨日が久しぶりだった。

「別に麻嘉を避けてたわけじゃないんだけどな……。」

　もしかしたら麻嘉が勘違いしてるかも知れないと何度も思って声をかけようとしたが、今さらな感じがして、そのままにしてしまっていた。

　ふと、肩に手を触れる。

　千華に自分が背中に付けたキスマークを指摘されたが、暫くの間篤斗にも麻嘉が付けたｰあとｰがあったのだ。

　尚志も千華も知らない、ましては麻嘉も気がついてないだろうけど。

　抱く度に、麻嘉に強く抱きつかれ背中に食い込んだ、麻嘉の爪の後に、気が付いたとき、あの日の出来事が現実だと思い知らされた。

　もう消えた後に、体が火照る。

　シャワーを浴びたあと暫くボーとしてたようで、扉が空いたことにも気が付かなかったようだ。

「お前何、百面相してんの？おれ、今日予定あるからもう帰るよ？まっ、しっかりな？」

　自分より後に起きたはずなのに、身支度をしっかりしている尚志に、意味不明なことを言われ、尚志はそそくさと部屋を出ていく。
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