100回の好きの行方
 社長の後ろから、菜月が自信を帯びた顔を覗かせ、社長の横に歩みでた。

「社長、私、頑張ります!」

 この状況を飲み込んでいるのは、菜月、ただ一人で、麻嘉は"あっ異動なんだ。"と、他人事のように話を聞いていた。

「深山がうちの看板デサイナーになれるとは、到底思えない。朝霧を異動させる理由はなんですか。」

 尚も反対する佐伯に、社長は麻嘉に向き直った。

「……謙虚さがなくて、傲慢なやつは、うちのデサイナーにふさわしくない。」

 社長の発言に、みんなはさらにびっくりする。

 謙虚な姿勢で仕事をして、傲慢な様子も露知らずの麻嘉に対して、あまりにも社長の評価はあわないからだ。

「……えっ?」

 麻嘉も驚き、小さな声を出す。

「君は、工場の娘のリングの依頼を勝手にうけた。それも、依頼料を貰わず。そんな勝手なことされたら困るんだよね!」

「えっ、でもちゃんと佐伯課長にも報告しましたし、問題はないと思うんですが。」

 麻嘉は納得出来ないと声を出す。

「報告の有無じゃない!引き受けること事態問題なんだよ。出回っていないフラワーシリーズが出回って、噂を聞きつけマリッジリングの依頼が増えたら大変だ。デザインがひとつひとつ違うものに、さく時間はないんだよ!マリッジリングはうちはしない、ファッションリングに力を入れてるんだ。それを忘れたわけじゃないよね?」

 社長に捲し立てられ、麻嘉は後ずさりをした。


 
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