１００回の好きの行方
　菜月の言葉を聞いた瞬間、篤斗が握りこぶしでデスクを激しく叩いた。

　その大きな音に菜月も麻嘉も驚く。

「……社長が決めたんだし、文句あれば社長に言ってよ。早く営業行ったら？」

　篤斗は菜月を睨み付けるが、全く怯むようすはなく逆に笑ながら"いってらっしゃい"と彼女が彼氏を送り出すような表情を浮かべ、手を振ってくる。

　篤斗はその行動に怪訝な顔をし、尚志と享は菜月を見ることなく、麻嘉を心配そうに見つめながらフロアを後にした。

　フロア内は仕事の忙しさを取り戻し、今の出来事がなかったように騒がしくなる。

　麻嘉は何も言わず、デスクを片付け始める。

　佐伯課長もあかねも宗治も何を言っていいのか分からず、淡々と片付ける麻嘉を見ている。

「パソコン置いていってくださいね。」

　菜月にそう言われた麻嘉は、びっくりして"これ、私物だから。データは共有BOXに入ってるから。"というと、パソコンと身の回りの物を持ち、みんなに一礼して出ていった。

　そんな姿を悔しそうに見送る仲間たちとは違い、菜月だけが清まし顔をし、共有BOXを空けて中身を確認している姿が見られた。

　

　
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