100回の好きの行方
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 身勝手な人事異動があって数週間。

 メディアに向けて大々的ー新生フラワーシリーズーの宣伝をしていたため、今か今かとメディアは発表を待っていたが、一向に発表されることはなく、不穏な空気が会社中に流れていた。

 佐伯が中々デザインにOKを出さないからだが、デザイン部のみんなも菜月のデザインを見て、佐伯の気持ちを分かっていたから、何も言わずに菜月に援助することもしなかった。

 麻嘉が異動してからすぐに、菜月は佐伯にデザインを持ってきた。

 渾身のデザインだと、自信満々な様子であったが、それは佐伯によって打ち砕かれる。

「深山!これは落書きか!?最低でも五点準備しろ?いいな!!」

 最初は人事異動に納得していない佐伯が機嫌が悪く、深山に怒鳴っているのかと思っていたが、菜月が泣きながら飛び出していったあとそのデザインをみた皆は絶句した。

 佐伯の言うように、デザインじゃなく中高生より下手くそな落書きなのだ。

 嫌、下手したら中高生の方が上手に書けるんじゃないかと思うくらいひどいものだった。

 そのデザインをみた瞬間から、デザイン部のみんなは菜月の肩を持つことは出来なくなったのだ。

 麻嘉と雲泥の差のデザイン。

 菜月は麻嘉の変わりにもならないのだから。
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