100回の好きの行方
 菜月は、菜月で社長に怒られていた。

「深山。デザインはまだか?佐伯から報告がこない。メディアは発表を待っているだぞ。いつまで待たせるんだ?」

 菜月は、ただ下を向いているだけで何も言わずにいた。

「新生シリーズを今か今かとメディアも消費者も待っている。深山がデザイナーと言うことは知られているんだ。あと、1週間。それまでにデザインを仕上げろ、いいな。」

 そんなこと言われても、佐伯がOKを出さないのだからとは、口が避けても言えないため、必死に社長からの言葉に耐える。

 社長室を後にして向かったのは、カフェスペースだ。

 そこから聞こえてくる噂話に耳を傾けた。

「まだ、新生シリーズできないの?」
「あんなに大々的メディア発表したのにね。」
「麻嘉さんいなくて、ちょー痛手だよね。麻嘉さんがデザインすればいいのに。」
「本当、本当。」
「嵜村さんもなんで麻嘉さんじゃなくて、あんな女と付き合ってたんだろね。」

 皆は菜月が近くにいるとは知らずに話を続けながら、コーヒー片手に去っていく。

「麻嘉、麻嘉ってうるさいんだよ!」

 菜月は声をあらげた。
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