100回の好きの行方
 菜月がイライラするのは、佐伯にデザインを認めて貰えないからじゃなく、新生シリーズの重圧からじゃなく、自分の目論見が叶わなかったことだ。

 全くと言っていいほどデザインが出来ない菜月は、麻嘉がデザインをパソコンに貯めていることを知り、それを利用しようとしていた。

 しかし、私物のパソコンを手に入れることが出来ず、自分が1からデザインする羽目になってしまう。

 あのパソコンさえ手に入ればと、何度も思ったが、異動先は総務部でも倉庫の掃除のため、オフィスにいることがない麻嘉と接触は出来なかった。

 佐伯には落書きと言われ、社長には急かされ、菜月は限界が近かった。

*******

「なぁ、深山、大丈夫かよ?」

「知らねーよ。」

 麻嘉がデザイン部を去り、イラつきを隠せない篤人は、何を聞かれても、"知らねー。""わかんねー。"と言うばかりで、みんな困惑していた。

「課長、大丈夫ですかね。もう、納期ヤバイですよね?」

 篤人に何を言っても無理と判断した尚志は、課長に話をふるが、課長も同じような反応なため、さらに尚志は困惑する。

「だって、あんなデザイン見せられたら誰でもこんな反応になるわよ。いっそ、麻生くんがしてみたら?」

「え!?嫌ですよ!」

 あかねと宗治はそんな話をしてる。

 麻嘉がいた頃のような活気がなく、"まなかべコンビ"は深いため息をつく。
< 98 / 188 >

この作品をシェア

pagetop