好きになるということ。
男が出たあと、煙草臭いその部屋から一刻も早く出ていきたいのに、身体が重くて仕方ない。
スマホの画面をつけると、時刻は十時をまわっており、昼の十二時から何も食べていない私のお腹はとっくに限界を超えている。
かといって作る気力が失せてしまった為に、今夜もテイクアウト品で満たすしかないと、重い体をゆっくり起こす。
だがベッドから出たのは、それから三十分も後の事だった。
「あー...また怜ちゃんから電話...」
かけ直したくない相手からの鬼のような電話にため息まじりに呟きながら、タクシーを探す。
今日も中華か―――なんてどうでもいいことを考えながらタクシーに乗り込み家路に付いた私は、渋々ながらに履歴から“怜ちゃん”という文字を押した。
「もしもし、うん、少し書けたって。え?うんうん、それはまた明日直すから。え?あー、ちょっと充電切れそうだからまたね!!」
―――鳩になれたらいいのに。
なにも考えたくない。