サンタクロースは君だった
* * *

 グレーのコートを羽織り、濃いブラウンのブーツを履いて外へ出る。吐く息が白い。冬ならではのピンと張りつめた空気に肺がヒリヒリした。
 階段の下には紺のダッフルコートを着たレオがいる。今日はマフラーがない。ひかりを見つけたその瞳がパッと輝く。

「ひかりちゃん!」

 にっこり笑って手を振るその姿は犬が飼い主を見つけてしっぽを振る姿に似ている。そんなことを思いながら階段を下りると、レオはゆっくりとひかりに近付いた。

「あけましておめでとう!今年もどうぞよろしくお願いします。」
「こ、こちらこそ!どうぞよろしくお願いします。」

 二人で頭を下げ合った。ゆっくり頭を上げて重なる視線に二人で小さく笑ってしまう。

「今年最初に会う人は、どうしてもひかりちゃんにしたかったんだ。」
「…ありがとう、ございます。」

 そんな言葉にいちいち照れてしまう自分を何とかしたい。年相応の振る舞いというものは、年相応の経験を積まないとできないものであることをレオと一緒にいると、余計に感じてしまう。

「へへ、ほっぺが赤い。…照れてる?」
「こ、言葉にしないでください…。私はレオくんと違って…経験がないんですから…。」
「僕も経験ないよ。他の人じゃ照れたりしないもん。さっきひかりちゃんがニコってしてくれて、どれだけ照れたか!」

 照れたようになんて見えなかった。それだけ、ひかりにはゆとりがない。レオを目の前にするとゆとりなんてものはどこかに消えてしまう。

「さて、じゃあ行こうか。」
「どこにお参りに?」
「ここから15分くらいで行けるとこ。リサーチ済だよ、任せて!」

 車道側をレオが歩く。隣に並んで歩くと、右半身の緊張感が凄まじい。ふと、レオの左手にひかりの右手が触れた。

「つめたっ…。」
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