サンタクロースは君だった
「え?」

 思っていたよりもずっと冷たいレオの手。その手の冷たさに、自分が手袋をし忘れていたことに気付いた。

「手袋!…あ、良かった。ポケットに入ってた。これ使ってください。」

 ひかりは自分の手袋を差し出した。幸いレザータイプではなくよく伸びる毛糸タイプの手袋だ。少し小さいかもしれないがそれでも、この手をそのままになんてしておきたくなかった。

「え、大丈夫だよ。僕、気にならないし。ひかりちゃんが使って。寒いでしょ?」
「き、気にしてください!レオくんの手は大事な手でしょう?ギターもピアノも弾くし…冷やしちゃダメです。」

 ひかりはぐいと、レオの手に手袋を押し付けた。するとレオは嬉しそうに微笑んだ。

「…半分こ。」
「え?」
「…じゃあ、一つだけ借りるね。一つはひかりちゃんの。」
「でもそれじゃ片方が…。」

 そこまでひかりが言いかけ、それを遮るようにレオが小さな声で言った。

「…手を繋がない?」

 少し視線がひかりからずれ、下を向いている。右手で頭をかくその仕草が何だか幼く見える。ほんのりと染まる頬がひかりの頬にも伝染した。

「っ…え…えっと…手…ぶくろではなく…?」
「うん。…あの、ひかりちゃんが絶対嫌って言うならもちろんいい。我慢する。ひかりちゃんが嫌がることは絶対したくないから。でも少しだけでもいいかなって気持ちがあるなら…手袋じゃなくて、ひかりちゃんの片手を貸してほしい。」

 絶対に嫌という感情を何に対してもあまりもたないで生きてきたひかりにとっては、レオのことももちろん絶対嫌などではない。むしろ、レオと話したりご飯を食べたりすることは少なからず楽しさをくれる。
 見上げた先には、頬だけではなく鼻も赤いレオがいた。気まずそうに視線を彷徨わせながら口を開く。

「…だめ、かな。」

(だめじゃ、ない。だめだったら、一緒に初詣なんかに行かないよ。)
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